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企業人事を支援する人事代行企業

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はじめに

採用活動を行うにあたって、検討事項はさまざまあります。例えば採用活動の一連のフローをどのように設計するのか、母集団形成をどの様に行うのか、人事としてどの点にバランスを取るのかなどです。

さまざまな検討事項の中でも、今回は候補者のクロージングについて解説していきたいと思います。

採用活動の原則

採用活動において常に意識すべき原則として、候補者と企業の間での「相互理解からの相思相愛」という状態を作ることです。この原則を踏まえた上で、人事は「会社の成長に貢献できる人か」「会社がその人を幸せにできるか」という視点を持つことも必要です。「相互理解からの相思相愛」という状態を達成するために意識しなければいけないことは大きく分けて2つあります。

フラットであること

1つ目は企業・候補者のどちらも対等な立場であるということです。

採用活動は時折恋愛に例えられますが、採用活動における関係構築においても、双方が対等な関係でなければ長期的な成功は難しいと言われています。 例え自分が相手のことをどれだけ魅力的に感じていても、相手が自分に対して同じように感じていなければ、成功は遠くなります。 また、どちらかが相手に対して無理な提案を押し付けたり、高圧的な態度を取ると、信頼関係の構築は困難になります。 なぜなら、高圧的・威圧的な態度を取るだけで、相手に対する相互理解が妨げられてしまうからです。

採用活動においても同様です。企業側が複数の候補者の中から一人を選ぶように、候補者側も複数の企業の中から一社を選ぶという、どちらも選ぶ側の立場に属しています。どちらかが相手側に対して高圧的・威圧的な態度を取ってしまうと、関係構築は困難になるでしょう。

内面を伝える

2つ目は内面的な魅力を伝える努力が必要であることです。

ビジネスにおいて、企業の成功要因は単に年間売上高のような目に見える経済的・社会的豊かさだけではありません。 本当に大切なのは、企業文化や価値観、ビジョンなどの内面的要素です。ここでいう内面とは企業の

  • ミッション・理念
  • 仕事内容
  • 企業のフェーズにおける挑戦可能性
  • プロダクトの面白さ
  • 職場の雰囲気

などが挙げられます。しかし、これらを効果的に伝えるのは容易ではありません。その際に、「主観的な魅力」と「客観的な魅力」という二つの軸に分けて発信すると効果的です。主観的な魅力とは自分達が感じている文化や雰囲気のことです。例えば自分たちの職場の社員同士の仲が良いと感じているのであれば、それは主観的な魅力になり得るでしょう。次に、客観的な魅力とは、市場や競合と比較した際の企業の強みです。例えば、COVID-19パンデミック以前において、フルリモート・リモート勤務可能であることは、客観的な魅力として伝えることができました。しかし、今ではフルリモート・リモート勤務可能な会社も増えてきたため、他社と比較して客観的な魅力だとは言い難いかもしれません。この客観的な魅力をしっかりと理解できている会社が採用活動市場においては強くなってきます。

一方で、自社の魅力を発見できないと感じる企業は、まず自社が持っているストーリーについて改めて把握することが重要です。

例えば弊社であれば、代表は創業以前ハードワークで働いていたのですが、ハードワークであることが生き方の本筋であるのか疑問に思い、色々な働き方が実現できる会社を作りたいという想いで弊社を立ち上げました。しっかりと仕事に関わる人も、仕事以外の時間を大切にする人も、どちらも存在していい、その様に考えています。その上で、なぜ社外人事に取り組んでいるか、という部分においては元から経験していたことに加えて、個人や会社の成長を外からサポートすることや関わりによって生まれる変化を見ることを、面白くポジティブに感じているからです。このようなストーリーが、候補者にとって魅力的な要素となるでしょう。

上記のような点を意識することで、相互理解からの相思相愛を目指しています。

採用活動を始めるにあたって

上記の準備ができれば、すぐに採用活動が成功するというわけではありません。その他に「社内で何を調整や変更することが出来るか、何は調整が利かず、変えることができないか」という観点を把握しておくことも重要です。簡潔に言えば「何に妥協でき、何に妥協できないか」とも言い換えられます。以下では、この観点から考慮すべき重要なポイントをいくつか紹介します。

内定を出すタイミングを調整できるか

候補者の転職活動のスケジュールは非常にタイトになることもしばしばです。一般的に候補者が同時進行で複数社の選考を進めており、内定承諾期限は1-2週間が一般的であり、長くても1か月程度です。また、金曜日に内定が出て、週末を挟んで翌月曜日にお返事、というケースも決して少なくありません。そのため企業側では、選考スピードと内定のタイミングを計ることが重要になります。 選考が遅いと他社に先を越され、早すぎる承諾期限だと候補者から辞退される可能性があります。このバランスを取るためには、候補者の選考スケジュールを把握し、適切なタイミングで内定を出すことが必要です。候補者が受けている他社と比較して選考スピードが遅かったり、内定を出すタイミングが遅いと他社に先を越されてしまう場合や、その逆も考えられます。そのため、候補者の選考スケジュールを把握し、選考スピードを調整したり内定を出すタイミングを前後させる必要があります。

また、内定を出すタイミングを考えるうえで大切なことは、候補者が転職活動期間中のいつ内定を出されると嬉しいかを把握することです。転職活動期間中の序盤・中盤・終盤のいつがいいかは個々人に寄ってそれぞれです。これも候補者とのコミュニケーションを通じて事前に把握することができていると、よりよい結果につながるでしょう。

提示することが出来る年収額を調整できるか

提示する年収額も非常に重要なポイントです。 特に、他社との競争が激しく、候補者をどうしても採用したいという場合、本来そのポジションで想定していた年収より、高く提示される傾向にあります。しかし、このようなアプローチにはリスクが伴います。

多くの企業では、社内のグレード・等級などに基づいた給与決定をしています。提示する年収額が設定されたグレードに基づいていない場合、または引き上げられた給与が内定者の実際のスキルと合致しない場合、ミスマッチのリスクが高まります。そのため、給与と能力のバランスをしっかりと考慮する必要があります。 もし候補者が求めている年収と提示できる年収に乖離がある場合、社内の給与テーブルと照らし合わせ、候補者の能力が給与と見合っているかどうかを詳細に検討することが必要です。

一方で、会社としてどうしても採りたいと思う候補者がいることも採用活動において珍しい事ではないと思います。例えば、会社として提示できる年収は500万円だが、候補者が希望している年収は600万円だとするケースです。このような場合は、サインアップボーナスを提示したり、入社後の評価制度の説明を通じて入社後に希望年収を達成することができることを説明してみましょう。また、一緒にご飯に行ったりといったウェットな人間関係構築も有効に働くこともあります。どうしても入社してほしいがその人の希望年収を叶えることができない場合は、職場環境や一緒に働く人たちの人柄などその他の魅力を伝えるように意識してみることも重要です。

リファレンスチェックなどの選考フローを調整できるか

面接だけで、候補者が希望する給与額と能力が見合っているか判断できない場合は、リファレンスチェックも有効です。これは候補者の前職の人達に、候補者が職場でどのような業務を担当していて、どのような成果を出すことができていたかを確認する行為のことです。外国の企業では盛んに行われているプロセスなのですが、近年、日本でもWeb・IT系企業を中心に行うケースが増えています。リファレンスチェックを実施することで、面接や職務履歴書に記載された内容と実際の業務内容・成果に乖離がないかを確認することや、どういった環境で成果を上げていたのかを確認する事が可能です。入社後のミスマッチを減らすことができます。

まれに候補者の他社選考委状況を踏まえると、リファレンスチェックを行う時間が取れなくなることがあります。そのようなケースが発生した際にリファレンスチェックをスキップするかどうかを事前に決定しておくことが重要です。ただし、リファレンスチェックを省くと、ミスマッチのリスクが高まることを理解しておく必要があります。

採用活動を行うにあたって、以上のことを決めておくことが大切です。

もう一度まとめると

  • 選考フローの中で前倒しにするorスキップ可能なものはあるか。その場合のリスクを許容出来るか。
  • 企業側から提示できる年収幅はどの程度なのか。また、その提示額は社内の給与テーブルを無視したものになっていないか。提示可能額を上回るが魅力的な候補者が現れた時にどのように対応するのか。
  • リファレンスチェックを行うのか。採用スケジュールの前倒しなどでリファレンスチェックを行うことが難しくなった時に、それは許容するのか。

上記のような点に対し、社内でどの程度調整が利くのかを把握しておくことで、採用出来ないと言う問題と、入社後のミスマッチのリスクを下げることができるでしょう。

クロージングで聞くこと

弊社は採用活動におけるもっとも重要な部分は選考期間の後半段階におけるクロージングだと考えています。内定承諾率が高まることが、採用全体の数値に影響を与えるためです。

最終選考前に、候補者に対してヒアリングの電話を入れることを推奨しています。

ヒアリング電話では下記のような質問をしています。

何を転職活動で実現したいのか

転職活動の目的は人それぞれです。例えばリモートワークができる会社にしたいといった労働環境を変えたいという理由や、年収を上げたいといった理由も考えられます。重要なのは、候補者が一貫した条件で転職活動を行っているかどうかです。

例えば、転職で実現したいことが「リモートワークできる環境で働きたい」という人が、採用面接を受けている会社の中にリモートワーク不可の会社が含まれていたとします。その場合、単一の軸において転職活動を行っていないということになります。

このような場合は、本当の転職理由を本人も気づいていない可能性があります。例えば、実現したいことはリモートワークできる環境ではなく、子育てにも時間をさけるようにフレックスタイム制度や子連れ出社が可能な環境で働くことなのかもしれません。そのようなケースが発生した場合は本人が本当に転職で実現したいことを見つけられるようにサポートを行います。これによって会社側・候補者側双方においてミスマッチを減らすことができ、お互い円滑に転職活動を行うことができると考えています。また、自分自身で実現したいことを考えられる人においても、それが本当に実現したいことであるのか、一番大事なことであるのか、しっかりと確認します。

転職活動を行う動機になっているものは何か

候補者にとって転職活動はとても大変なものだと思います。普段の仕事や生活を続けながら職務履歴書を作成し、転職エージェントや転職サイトを用いて情報を収集し、面接や面談のための時間も確保しないといけません。また、地方から都市圏などへ転居を伴うケースもあります。転職活動の結果次第では年収のダウンや環境の悪化などのリスクも付きまといます。このようなリスクを理解した上で転職をする動機は何か、という点も、候補者の志向や価値観を知る上で非常に重要です。

転職の動機は多岐にわたりますが、例えば現職での勤続年数、ライフイベント(結婚、出産など)、または年収に対する不満などがあります。転職で実現したい目的と同様に、その動機が本当に最優先事項であるかどうかを確認することが重要です。

それらが包含された理由になっているか

転職活動で実現したいこと、そして転職活動を行う動機を確認して、その二つが包含できる活動をされているかがとても大切です。転職で実現したいことが「年収を上げたい」であり、その動機が「出産によりお金が必要になったから」といったような具合になっていることです。逆に、実現したいことが「年収を上げたい」なのにその動機が「子育てに時間を割きたいから」では論理の一貫性が見られず包含された状態になってせん。このような場合においても本人が本当に大切にしている転職軸や実現したい状態を探すサポートを行います。

何が候補者にとって魅力になるか

上記のことを確認した上で自社のどの様な魅力が候補者にとって魅力的かを把握し、もう一度会社の魅力を伝えます。この際には、候補者の実現したいことが自社で可能であることが伝わるような魅力に限定してお伝えします。例えば「労働時間にとらわれずに仕事に打ち込みたい」と考えている人に対して、「福利厚生が充実している」というような説明はあまり魅力的に映らないかもしれません。一方で「成果主義である」「裁量労働制である」のような要素を会社が持ち合わせていた場合、こちらは候補者にとって魅力的に映るかもしれません。

個々人に対して会社のどのような要素が魅力的に映るのか、その人の理想の実現に会社がどう役に立てるのかを整理して伝える必要があります。

おわりに

採用活動の原則からクロージングにおいて意識すること・確認することまでお伝えしましたが、意識すべきことは以下の通りです。

  • 採用活動を通じて「相互理解からの相思相愛」を目指す
  • 採用活動では「何を変えることができるか、何を変えることができないか」を考えておく
  • クロージングは、転職で実現したいことや動機から、適切なインプットを行う

この3つのことを意識することで、採用活動が少しでも成功と呼べるものに近づくことができると考えています。

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