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はじめに

中途採用において、採用ターゲットを明確に設定し選考を進めていかなければ、無駄な工数や求人広告費がかかってしまい、最終的に欲しい人材が採用できず無駄打ちになってしまいます。採用ターゲットを明確にするためには、現場へのヒアリングや求める人材の解像度を上げるなど、現場とのコミュニケーションが必要不可欠です。

今回は、現場が持つ課題や要望をもとに、どのようにターゲットを決定するのか、現場とのコミュニケーションの取り方も含めて説明していきます。

人材の解像度を上げるためには

必要な人材への現場の解像度は、過去に現場が経験した職種や、近かった職種、仕事内容などについては高く、一方で経験がない職種や周囲にいない職種に対する解像度は、非常に低い場合があります。採用は企業の課題(起きている事象)を解決するための1つの手段です。企業の課題は多岐に渡りますが、一般的には、社内の労働力や専門性が足りないことに起因する場合が多いです。しかし、実際は課題に対する直接的なアプローチではなく、「現状○○のポジションが不足しているため、採用したほうがよいのではないか」と職種やポジションの話から始まることが多く、人材の解像度が低いまま採用を開始してしまうことになります。

仮に、候補者に会う段階まで進めることができたとしても、面談や面接の担当者が、役割自体のイメージができていないため、候補者側は面談や面接の中で自分が何故選考フローに立っているのか不安に感じてしまいます。また、もしも選考が進み入社が決まったとしても、候補者は入社後に、「想定していた仕事と違った」と期待していた内容と実際の業務にギャップを感じてしまいます。候補者に求める役割や期待が定まっていない状態で採用を進めることは、企業側にも候補者側にも不幸な結果を招くことになります。

不幸な結果を招かないためには

必要な人材の解像度を上げるためには、現場とコミュニケーションを取ることが必要不可欠です。その際に大切なことは「何を解決したいのかを確認する」ことです。例えば、プロダクト開発中にバグが発生し、改修のために莫大なコストがかかっている状況を改善したいという課題があるとします。改善の意図としては、生産性向上のためにバグを減らすことであったり、開発の効率を上げることであったり、人手を必要とせず改善できる状況を作ることなどの本質的な課題の背景が挙げられます。現場でどのような問題が発生しているのかを、人事側は具体的にヒアリングする必要があります。ヒアリング不足のまま採用を進めてしまうと、人事側はどのような内容で候補者へコミュニケーションを取るべきかイメージできないという問題が発生します。また、入社後に成長するかどうかや、活躍できるかどうかも重要になるため、活躍の再現性とはなにかを現場に聞いていきましょう。その結果、正社員の採用ではなく、専門業者に依頼した方が良いであったり、フリーランスや派遣のほうが合理的等のケース(少数しか必要なく、キャリア形成も望めないため等)もあります。現場とコミュニケーションを取りながら、抽象度の高い話の解像度を上げていくことを通し、ターゲットを理解し、解像度を上げていきましょう。

魅力付けについて

一方で、面接までは進むが採用には至らないケースや、面接へ進む候補者が居らず、母集団形成に困るケースも発生します。その場合考えられられるのは、候補者にその仕事内容や、雇用条件、キャリアの展望が魅力的に映っていないケースです。候補者は、現職よりも次の会社へ転職するほうがメリットが多くあるため、転職という選択肢を選びます。その理由は給与の場合もあれば、ポジションを上げたい場合や、経験の幅を広げたい場合、良い仲間と一緒に働きたい場合など様々ですが、必ず理由があった上で転職活動をしています。そのため、企業は転職の後押しとなるような魅力を準備する必要があります。

知名度が高く注目されている企業は、自ら魅力をアピールせずとも候補者が集まります。しかし、大多数の企業はそうではありません。その場合は、魅力的に感じてもらえるポイントを自分たちで探さなければなりません。在籍している社員の共通項や、社員が在籍している理由などから探すなど、社内でのヒアリングは非常に重要です。

市場にいるのかいないのか、現場と確認する

ハイヤリングマネージャーとの緊密なコミュニケーションを持ちながら、求める人材についての明確なイメージを形成することは非常に重要です。しかしながら、マネージャーは自分の経験や過去の同僚を参考に、理想的なターゲット像を持っていることが多いです。このため、彼らが求めるような人材が実際の市場にどれだけ存在するのかの認識がずれてしまうことがあるのです。

現実の市場状況を理解してもらうため、具体的なダイレクトリクルーティングの検索ツールを活用して実際の候補者リストを生成し、それをマネージャーと一緒に確認することを提案します。この手法により、彼らが想像している理想的な候補者と、実際の市場での存在数のギャップを体感してもらえるでしょう。これによって、求める人材の条件を再調整するか、または採用戦略を見直すきっかけとなります。

ターゲットを広げる際のコミュニケーションについて

事業計画や成長目標をもとに、採用計画や戦略が練られ、決定したターゲットに対しアプローチしていきます。ターゲットが狭く、予定よりも採用に時間がかかる場合、計画が遅延します。人員が不足する状態に、問題がなければターゲットを維持しますが、問題がある場合はターゲットを広げるために再度コミュニケーションを取りに行きましょう。また、可能であればターゲットを設定した際、事前にこの要件では計画に遅延が発生することの認識を合わせることも重要です。

反対に、ターゲットが広すぎる場合もコミュニケーションを取りながら定めていく必要があります。例えば、法人営業経験のみを必須要件として選考を進めていたが、なかなか入社まで至らないケースを考えてみます。想定される原因は、隠れた前提があるなどです。本来であれば、法人営業経験の中でもソリューション営業や無形商材の経験、コンサルティング要素など、提案要素が強い営業経験が必須であるのにも関わらず、省略して法人営業経験と言っている場合があります。現場へのヒアリングの際には、隠れた前提が無いか探すようにしましょう。

ターゲットの確認~具体例~

ホリゾンタルSaaS企業の営業職を採用したい場合

ヒアリングの際には、そもそも営業職の採用というものがフィールドセールスなのか、インサイドセールスなのか、カスタマーサクセスなのか、どのポジションと認識しているのかを確認しに行く必要があります。その中で仮にフィールドセールスの場合、フィールドセールスが必要な背景を確認します。営業売上を上げるためか、アポイントは取れているがクロージングする人を増やすためか、もしくは既にフィールドセールスはいるが売上が上がっておらず、さらに売れる人が必要であるためか、どのような課題を解決するためにフィールドセールスを採用するのかを確認します。

フィールドセールスを採用しにいくことで合意ができたら、次に採用するにあたって、どのようなスキルセットや経験を持つ人材を採用したいのかを確認します。SaaSプロダクトの営業経験3年以上、フィールドセールスでシニアな経験者を採用したいと言われることがあります。しかし、SaaSプロダクトのSES企業でフィールドセールスという職種に関わっている人材は世の中にとても少ないのが現実です。

そのため、SaaSプロダクトを開発している企業でのフィールドセールスの経験などでターゲットを定めるのではなく、具体的にどんな経験が必要なのか深堀する必要があります。また、許容できるものとできないものの線引きをしましょう。入社後に活躍できるか、その再現性をどこに置くのか、最も後天獲得の難易度が高いものは必須要件となり、反対に後天獲得が簡単なものの優先度を下げるべきであるといったコミュニケーションを取ります。

おわりに

現場とのコミュニケーションでは、お互いに抽象度が高い話をすることになります。「こういう職種の人材が欲しい」、「こういう経験のある人材が欲しい」という現場の要望に対して深堀をせずに進めてしまうと、解像度の低い採用活動になってしまいます。ターゲットの抽象度が高い場合、何でそうなのかをとにかく深ぼる必要があります。社内で起きている課題に対して、どのようなスキルや経験を持つ人材であれば入社後に活躍することができるのかを必ず確認しましょう。

一方で、現場側には市場感についての情報がありません。市場感とは、経験がある人材が世の中にどれぐらいいるという感覚と、その人材の年収はいくら程度だという感覚の二点です。市場感は、人事側が獲得するべき情報であると考えています。先ほど説明した通り、ダイレクトリクルーティングで実際に検索をかけてみるであったり、エージェントからヒアリングをするであったり、様々なルートを通して、求められている人材が世の中にどれぐらいいるのかを確認していく必要があります。それらを通して、市場感的にはこのような人材がいるであるのか、ターゲットとしては明確に定義できるが、市場にあまりいない場合は現場側にアラートとして挙げ、そのままのターゲットで進めるのか、ターゲットを広げる場合、どこを広げるべきかということを建設的にコミュニケーションを取りにいく必要があります。

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